2014年9月16日火曜日

髪の毛が燃えました。


丸山交通公園です。

くりかえしへこむ・閻魔旅行の稽古がずんずんと進んでおります。

僕はくりかえしへこむの脚本・演出・出演。閻魔旅行に出演と、なかなかにがっぷり四つに日々を過ごしているのです。

 

いや、しかし、へこむようなことは多いもので。



この前も、一週間ほど前ですか。

お金が足りず、電気代を払わずにいたところ、稽古に会議が終って、深夜2時頃に帰宅すると、家のポストに関西電力からの書状が挟まっていて、なんだろう、と思いつつ、部屋に入り、しっかりと読もうか、と思って電気のスイッチをパチリ。ですが、電気はつきません。

家を出て、アパートの廊下の共有部分の明かりの下で、関西電力からの書状をつぶさに見ると、なるほど、本日電気が止まったということらしいのです。


部屋に戻った僕は、すべての明かりと、音までも消えてしまった部屋に立ちつくし「まあ風呂にでも入るか」と思い(ガスはまだ止まっていませんでした。3日後に止まることになります)湯沸かしのスイッチを押そうと思い、携帯電話の明かりを使って、スイッチを捜し、押すのですが、ガスがお湯をわかしてくれません。ガスのスイッチさえも電気で動いているからです。

電気代を払わなければ、自動的にガスも使えなくなるという。なんなんだ、と、思いながら、深夜のにわか雨にぬれた身体をバスタオルで拭き、ベッドに倒れこみました。

しかし、ベッドに倒れこんだものの、眠れません。

テレビ、パソコンはもちろん使えないし、ラジオを聴くのもパソコンを使っていたし、携帯電話を見ようにも、さきほどのガスのスイッチ捜しによって充電がきれてしまっているし。

いざ眠れないとなると、停電というのは非常にもどかしく退屈を増幅させていくのです。


僕は仕方あるまい、飯でも食うぞ、と思い、保存してあったチキンラーメンを食べようとキッチンに向かいました。

いざ、チキンラーメンを食べようと思うと、チキンラーメンの口になるもので、ましてや深夜二時、背徳の食欲が暴走します。


ベッドから4歩。キッチンに着くころには、もう、僕は食欲の奴隷です。



しかし、ここで、問題が起こります。

チキンラーメンを保存している場所を覚えていないのです。

普段ならば、2分ほど捜せば出てきます。電気があるので。

しかし今回は電気に頼ることはできません。そして、食欲の奴隷と化した僕には、チキンラーメンを諦めるという、そんな天啓じみたような考えは毛頭浮かんでこないのでした。

僕は、頭を巡らせ、目の前にあったカセットコンロ(僕はカセットコンロを普段使いの火口にしています)を手に取りました。


炎が、キッチンをぼんやりと照らします。いつものように電灯で画一的に照らされているのとは印象の違うキッチンはそれなりに刺激的なものではありました。

電子レンジの白い側面に飛び散った、おそらく肉関連の脂類やら、シンクにこびりつきぱなしの小口葱、排水溝から飛び立ちカセットコンロの炎に飛び込んでくる小蠅。

そういった、ちょっとした非日常に身をゆだねつつ、あらゆる棚を開いてチキンラーメンを捜索します。


真っ暗の中にカセットコンロの炎だけを頼りに大小の棚を開けて行くというのはなかなか恐怖心をあおるもので、棚を開けるたびに、なにやら不潔な虫や、困った動物が、飛び出てきそうな、或いは、そういったものたちが幾匹も集会めいてでもいそうな。そういったことになっても然るべき不潔のリアリティが僕のキッチンにはあるので、戦々恐々棚を開いて行きます。


そして、鍋などをしまう足元の棚(僕はそこに芋類や、インスタントのビーフンを入れていたこともある)を開けようと、しゃがみこみ、開きます。

そこには、親子丼などをつくる小鍋と、ばれいしょ、奥の方も探ってみると、芽の出たメークインが一つ。

チキンラーメンが無い少しの落胆と、生き物が居ない安心がないまぜになった気持ちになって、なった一瞬後。


焦げくさいのです。


あ、やってまった。と思い。照らしていた棚に火元を捜しますが、ありません。

ですが焦げるにおいは依然として収まりません。


僕はハッとして身体中を探りました。髪の毛、前頭部の丘のようになっている部分の髪の毛がチリチリパラパラと崩れて行くのがわかりました。



僕はチキンラーメンを食べる為に髪の毛を燃やしてしまったのです。

ああ、最悪や、と思っているうちに今度はガスボンベのガスが切れ、チキンラーメンが暗闇の棚から出てくることは無く、僕の髪の毛を燃やしただけで、炎は消えてしまいました。


いちよう、僕も役者のはしくれ、ですから、髪の毛の燃え方が心配でした。変な髪型になっては、色々な人に迷惑をかけてしまうし、もっと言えば、毛根が焼けると、もう、そこからは髪の毛が生えてこないというし、そうなったら、まあ、くりかえしへこむは、演出の僕が許すとしても、閻魔旅行の河合桃子は許すまい、と思います。

が、電気のない悲しさ、鏡の前に立った所で、鏡の向こうには暗闇があるだけで、僕の炎上した髪型を教えてくれはしません。

手鏡などあれば、共有廊下の明かりの下、真実を知ることもできるのですが、あいにく手鏡の手持ちも無く。



もう、どうしようもない気持ちになって、ベッドに戻った僕は、チリチリになった患部を手で撫ぜつつ、隣家からもれる明かりで目を凝らしながら本を読み、朝を待つようなことになったのでした。



 

というようなへこんだというか、もう疲れてしまったようなこととも対峙をしつつ、毎日稽古に励んでおります。

今日は通し稽古でした。スタッフさんも来られました。
面白かった、面白かったですけれども、まだまだもっと面白くなるのです。

 

頑張らないかんのです。
へこんどる場合ではないのです。


ああ、燃えてしまった髪の毛ですが、事件の翌朝、朝の光の中患部を見ると、チリチリと焼け焦げ、でも少し短くなっている程度で、あまり違和感はありませんでした。
しかし、部屋中に僕の髪の毛の灰がパラパラと落ちていて、それは箒ではきとりました。
箒がとても便利でした。


 そんなことでした。


くりかえしへこむ・閻魔旅行についてのウェブラジオも配信中なのです。

こちらもぜひ、お聞きください。
ざっくばらんにお喋りしております。
⇒http://mujyuuryokuradio.seesaa.net/article/405362303.html

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それでは。
読んでいただいてありがとうございました。



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